This is a Japanese translation of the original blog post, “Introducing the Global COVID Certificate Network (GCCN)“. Many thanks to Kohei Kurihara, Co-founder and CEO of Privacy by Design Lab, for this translation.
これまでの数ヶ月複数の政府機関がコロナ対策証明システムを発表し、中でも欧州はデジタルコロナ証明書(前欧州デジタルグリーン証明書)を最近発表しました。LFPHではこれまでに多くの医療機関(PHAs)やパートナーと議論を行い、現時点で早急に取り組む必要があるポイントを中心に取り組んでいます。
これまでの医療機関との議論を通じて、以下の2点を早急に取り組むべき必要事項とて定義しています:
- 全世界共通で信頼できるアーキテクチャがまだ開発されていないので、全世界で共通のアーキテクチャの設計はある地域で承認された証明書が別の地域で承認、もしくは否認することができる設計を採用する。
- コロナ証明書システムをどのように管理するべきか政策関係者、テクノロジーチーム間でも明確に答えが出ておらず、システム開発ベンダーも初めての取り組みなので、共通のシステム開発を実施するために必要な標準化を進める。
以上の2点の必要事項を実現するためにグローバルコロナ対策証明書開発コミュニティネットワーク(GCCN)を立ち上げ、複数の地域間での安全な渡航解禁に向けて、互換性があり信頼できるコロナ証明書システムの実現に向けて取り組みをスタートします。GCCNは全世界の登録機関と協力し、コロナ証明書の確認手続きが円滑に行われるためのツール開発や、開発者コミュニティのマネジメントサポート等の証明書システム開発に必要なリソースを提供します。加えて、システム開発ベンダーのエコシステム育成にも貢献できるような支援を行っていきます。
LFPHはGood Health Passが進める互換性のある設計書のドラフト作成に協力し、6月7日からパブリックコメントの募集を始めています。設計書では信頼できる登録機関とフレームワークの紹介、データとプロトコル標準の提案を始めとしてコロナ証明書が互換性を持ったシステム上で運用されるエコシステムに貢献するための内容を紹介しています。政府や産業団体に対しては運用可能な設計書を提案し、渡航解禁に向けた支援を行います。設計書を活用することで、既存のシステムと互換性を持ち、かつプライバシー保護を実現したシステムの実装を進めていきます。
GCCNの取り組み
GCCNは政府や産業団体、ソフトウェアベンダーやシステムインテグレーター、政府関連機関やLFPHコミュニティと連携し以下の開発を進めていきます:
信頼できる登録機関ネットワークと登録プロトコル
GCCNは信頼できるグローバル登録機関を協力リスト化したネットワークを設立します。協力リストを通じて政府や産業団体が他の信頼できる登録政府、団体にアクセスしやすくなり他の機関でどういった証明書発行が行われているか確認し、共同での取り組みを円滑に行いやすくできるようになります。既に政府で承認された発行書をリスト内で公開し、他の政府でも証明書の承認を円滑に行えるようにします。初期は一定程度の証明書ガバナンスフレームワークモデルを採用しているリストを公開します。今後は、未来のサービス実装に向けて必要なガバナンスモデルを採用している取り組みを定義しリスト化します。
全世界でのコロナ対策証明書をシステム実装するためのツール開発
・ガバナンスフレームワークのテンプレート開発を行います。ネットワークに参加した政府や産業団体が独自のポリシー設計(地域間でコロナ証明書を発行し、承認するため)を円滑に進められるように、ガバナンスフレームワークのテンプレートを開発します。参加した団体はそれぞれフレームワークのルールをもとに他の地域の証明書を承認するか否かを判断することができるようになります。
・データベース構造の定義化と最低限のデータセットの設計を行います。GCCNは3つの想定されるユースケースに対して(ワクチン、テスト結果、感染後の回復状態)データベース構造(スキーマ)をデジタルコロナ証明書と紙での証明書の双方を定義し提供します。
・技術仕様の設計を行います。グローバル全体でコロナ証明書システムを確認するために必要な全てのソフトウェアに必要な技術仕様を公開します。QRコードの仕様や証明書アプリ、フォーマット、署名が該当します。
・実装ガイドとオープンソース参照実装書を準備します。LFPHは既存のオープンソースプロジェクトであるMedcreds、Cardeaと連携して設計書の作成を行います。COVID Credentials Initiative (CCI)ではコロナ証明書の実装ガイドの開発を行います。
・実装とガバナンス用のガイダンスを準備します。Linux Foundationは登録機関やコロナ証明書システムを政府や他の機関から依頼されたシステムの実装は行いません。システムの実装は政府技術チームや委託先ベンダーで実施し、契約をもとに進めます。GCCNは実装に必要なアドバイスやコロナ証明書システムに求められるガバナンス設計のアドバイスを行います。システム実装を検討する国レベルでの信頼できる登録機関の設計や関連アーキテクチャ、既存の組織や開発コミュニティが特定地域でのグローバルコロナ証明書設計を実装するために必要なサポートを行います。
ベンダーネットワーク
必要な定義や計画、オープンソースで開発したソースコードをプロダクト実装に取り組むためのビジネスエコシステムを構築します。これまでに類似プロジェクトに携わったベンダーネットワークをリスト化し、政府や関連機関が実装を行いやすいようなネットワークを提供します。
コロナ対策証明書システム開発に関して、欧州科学技術選択評価委員会と議論を実施してきました。GCCNは欧州デジタルコロナ証明書及び世界中で運用されている既存のシステムとの橋渡し役(各国のコロナ証明書エコシステム)として機能する予定です。欧州機関との連携を模索している各国の組織と連携して、欧州デジタル証明書と他の地域のグローバルコロナ証明書に適応した仕組みの提供を行っていく予定です。
GCCNではGood Health Passと開発している互換性設計の実装をサポートします
The Good Health Pass Collaborative (GHPC) では2020年後半以降渡航制限後の安全な人の往来を実現するために旅行産業を中心とした議論が本格的に始まっています。現在進められているコロナ証明書の懸念点であるプライバシー保護と互換性の問題を解決するために、GHPCでは独自の設計を提案予定です。デジタル医療証明を既存の仕組みと連携して幅広く使ってもらうために、2020年2月にID2020の取り組みとしてGHPCは設立され、各国のシステムと互換性がある仕組みを採用し、互換性のある標準化された仕組みを通じてデジタル医療証明が実装されることを目指しています。これまでLFPHとCCIはGHPCへ初期のパートナーとして参加し、協力してドキュメントを公開しました。
LFPHとCCIはGHPCの設立当初から連携を深め、CCIで作成した設計書のドラフトを共有する等の活動に取り組みました。CCIでエコシステムディレクターを務めるKaliya YoungはLinux Foundation内で立ち上がったThe Trust Over IP Foundation (ToIP)が主催で開催されているGood Health Passの互換性を研究するワーキンググループの共同チェアを務めています。CCIコミュニティメンバーもワーキンググループへ参加し、メンバーの専門性を提供して設計書のドラフト作成を進めています。
GCCNは LFPHが主導する連携型のコミュニティとして活動します
LFPHが中心となり、世界中の医療機関が必要とするテクノロジー要素をオープンソースで開発を進めていく予定です。LFPHが提供する接触通知機能は既に多くの医療機関が採用しており、経済活動を再開するためのコロナ証明に必要なテクノロジーソースを引き続き提供していく予定です。
2020年12月以降LFPHはCCIと連携し、開かれたグローバルコミュニティとして100以上のメンバーが各国から集まりプライバシーを保護した証明書の仕様設計に向けて、互換性を担保しつつ医療機関で採用できるような仕組みの設計に取り組んでいます。CCIではプロジェクトアイデアを集め、アイデアをコロナ証明書の公共医療システム(PHAs)に反映できるよう手順を進めており、コロナ証明書に取り組むエコシステム全体に必要なテクノロジーソースを共有しています。コミュニティを活性化させるに当たって、CCIは他の組織とも連携を進めています。CCIコミュニティの活動は設計書の作成や互換性のワーキンググループの参考ソースとして利用されています。
LFPHは活動を通じて公共医療システム(PHAs)を運用する機関のアドバイザーとして各種の連携促進を行っています。接触通知機能を実装するためのフォーラム内ではイベントを開催するだけでなく、ドキュメントを作成し、準備したSlackコミュニティ内で各国の公共医療システムやベンダーと開発協力を行っているメンバーから世界の医療システムで起きている情報を共有しています。欧州各国と連携し、公共医療システムを支援するオープンコミュニティとして欧州デジタルコロナ証明書システムのバグの修正等でコミュニティの開発者が関われるような橋渡しも行ってきました。Slack内では開発に携わるメンバーが実装の際に出た疑問点を共有し、問題解決に繋げられるようなチャンネルを準備しています。GCCNはこれまでの活動を引き継ぎ、渡航者が渡航制限解除後に安心して往来ができるようにするために各国で実装を進めるメンバーのサポートを続けていく予定です。
GCCNへの参加
政府機関や産業団体で渡航制限解除に向けてコロナ証明書システムの開発を検討する際はinfo@lfph.ioにご連絡ください。
既存のコロナ証明書エコシステムの実装に関わっている方々は、是非CCIのSlackコミュニティ (#cci)に参加してテクノロジー実装で必要な技術仕様の設計を一緒に進めていきましょう。
開発者の方はSlackコミュニティに参加し、LFPHが取り組んでいるMedcreds、Cardeaという二つのプロジェクトへオープンソースで参加可能です。
GCCNをサポートしてくれている組織一覧
Affinidi, AOKPass, Blockchain Labs, Evernym, IBM, Indicio.Tech, LACChain, Lumedic, Proof Market, ThoughtWorksはGCCNの初期のサポーターとして支えて下さっています。加えて、Human Colossus Foundation, Continuum Loop Inc, Trinsic, Privacy By Design Lab, Finema, Dhiway Networks, HLN Consulting, LLC, Symsoft Solutions, digi.me (Consentry), Pravici LLC, Bloqzone, Immunodex, InfoCert, Pulse Connect, Validated ID, Safe Health, MATTR, IdRamp も支援団体として関わっています。
支援者よりコメント
“IdRampは国を越えた互換性システムに取り組んでいます。ゼロトラストの分散型IDエコシステムを実装し、グローバル企業や公共機関への導入を進めています。Good Health Pass、ID2020、Cardeaのメンバー、Trust Over IP Ecosystem Working Groupのチェアとしてグローバルで信頼される互換性を担保するソリューション開発に取り組んでいます。IdRampが提供するbak2.lifeサービスはイベント運営や施設運営を行う際にヘルスケアレコードを安全に記録できるオープンスタンダードを採用しています。グローバルコロナ証明書ネットワークを支援することは、オープンソースを通じてデジタル上に信頼できる空間を生み出すことだと信じ、コミュニティメンバーと協力してプロジェクトに貢献したいと思います。”
Mike Vesey, CEO, IdRamp
“越境での人の移動には複数の言語に対応したデジタル証明書が必要になると考えています。The Human Colossus Foundationはグローバルコロナ対策証明書ネットワークで採用した HL7 FHIR データ交換モデルとOCA実装時に必要な多国籍言語の証明書をW3Cが発表した確認証明書標準データモデル1.0に沿って実装をお手伝いします”
Paul Knowles, Head of the Advisory Council, Human Colossus Foundation
TrinsicはGood Health Pass互換性設計書に深く関わっており、グローバルコロナ対策証明書ネットワークを支援できることを楽しみにしています。Trinsicは信頼できるデジタル技術の採用に注力しており、信頼できる技術の互換性にも取り組んでいます。Linux Foundation Public Healthが取り組む新しい動きに関われることを楽しみにしています。
Riley Hughes, Co-founder & CEO, Trinsic
2020年初期に信頼できる登録機関をグローバルクレジットユニオンで採用したことは、グローバル金融分野でとても重要な動きでした。クレジットユニオンで採用した仕組みを渡航制限解除後の人の往来でも応用できることはとても素晴らしいと思います。LFPHを中心にスタートしたグローバルコロナ対策証明書ネットワークへ技術や標準的なプロトコルに関する仕様、互換性システムを信頼できるデジタルの仕組みのためにコミュニティで協力して推進していきたいと思います。Continuum LoopはLFPHが主導するオープンアプローチをクライアントとの取り組みでも進めています。
Darrell O’Donnell, P.Eng., President & CEO, Continuum Loop Inc.
Dhiway NetworksはLFPHがスタートした信頼できるデジタルアーキテクチャの取り組みに参画できることを楽しみにしています。これまでLFPH/CCIのメンバーとしてサポートしてきましたが、今後も医療分野で貢献できるようにガバナンスフレームワークや互換性、顧客体験の開発を進めていきたいと思います。
Satish Mohan, CTO and Co-Founder, Dhiway Networks
The Good Health Passの互換性設計書は信頼できる仕組みとして世界中で採用されると思います。Linux Foundation Public Healthがグローバルコロナ対策証明書開発コミュニティネットワークを主導することで、信頼できるデジタル空間が生まれると考えます。セキュリティやプライバシーの定義をコミュニティ開発に短期間で導入することで、信頼できるデジタル上の仕組み開発に貢献すると思います。SymSoft Solutionsは取り組みに参加できることを光栄に思います。
Savita Farooqui, Founder, SymSoft Solutions
医療パスポート提供者として、dig.me/Consentryは世界各国の陰性証明データをプライバシー保護しつつ共有することはとても重要だと考えています。The Good Health Passの互換性設計書は私たちや他のプロジェクトにとっても有益なものです。Linux Foundation Public Healthがフレームワークを採用し、グローバルコロナ対策証明書開発コミュニティネットワークを通じて拡大していくことは素晴らしいと思います。この動きを支援したいと考えています。
Julian Ranger, Executive President and Founder, digi.me/Consentry
MATTRはプライバシーを保護し、安全に陰性証明を共有する環境開発を支援することができてとても光栄です。グローバルコロナ対策証明書開発コミュニティネットワークの各国の信頼できる登録リストは地域を越えた互換性を考える上で有益だと思います。分散型ID技術が安全に、プライバシーを保護した環境でデータを共有する世界を実装していくと思います。グローバルで登録されているリストと陰性証明技術を活用し、テクノロジーが行き渡っていない地域の支援にも貢献できると良いと思います。
Claire Barber, CEO, MATTR
Validated IDはユーザーが自ら自身のIDを管理し、デジタル上だけでなく物理空間でも安全に利用できる環境設計を行っています。私たちのこれまでの取り組みが欧州e-IDフレームワークやグローバルコロナ対策証明書開発コミュニティネットワークに貢献できているこっとは光栄です。コロナ禍ではより信頼できる関係性構築が必要になります。今各国で始まっている陰性証明のオープンスタンダードの取り組みは経済復興でも必要になると思います。グローバルコロナ対策証明書開発コミュニティネットワークを通じて貢献できることを楽しみにしています。
Santi Casas, CEO and Co-founder, Validated ID
Finemaは政府や産業団体と連携し、これまでに信頼できるデジタルプロダクトを開発してきましたが、渡航制限解除後に安心して人の往来が行えるようにグローバルコワークロナ対策証明書開発コミュニティネットワークの取り組みも支援できることを楽しみにしています。LFPHよりコミュニティネットワークへの協力を頂いたことは光栄ですし、プロジェクトを通じて他の医療レコード同様にプライバシーを保護したワクチン証明を設計できることを楽しみにしています。
Pakorn Leesakul, Founder & CEO, Finema Co., Ltd. (Thailand)
PraviciはLFPH、CCI、グローバルコワークロナ対策証明書開発コミュニティネットワークの考え方に賛同し、陰性証明プロダクトPravici PocketCredの開発を行っています。私たちのソリューションは従業員や学生が安全な環境で活動できるように、互換性のあるネットワークの構築を進めています。市民のワクチン接種状況が記録され、自由に活動できるようになるためにLFPHやCCIが進めている計画はとても重要で、グローバルコワークロナ対策証明書開発コミュニティネットワークの動きにも賛同しています。
Mahesh Balan, CEO, Pravici LLC
グローバルコワークロナ対策証明書開発コミュニティネットワークの活動をサポートできることは、グローバルでの信頼できるアーキテクチャを実装する上でも重要だと考えています。互換性のあるコロナ証明書ネットワークを世界各国に広げていくことが大切だと考えています。InfoCertはQTSP(信頼されるサービスプロバイダー)、DizmeID財団のプレミアメンバーとして、Dizmeが取り組む自己主権型IDを導入し各国で活動が広がるように取り組んでいきたいと思います。
Daniele Citterio, CTO of InfoCert, a premier member of DizmeID Foundation